第67章 澱(おり)の中で$
これまで、俺から求めるばかりで、白藤から俺を求められたのは初対面の那田蜘蛛山の任務終わりの藤の屋敷でのみ。
それに、こんな抗いようのない、淫気に満ちた白藤を未だかつて見たことがない。
これこそが、彼女の鬼の顔なのかもしれない。
血に塗(まみ)れていたはずの彼女の腹部は術の効果か、はたまた彼女自身の回復力の賜物か、きれいに傷が塞がっている。
大きく破れた着物から彼女の白い肌が覗く。
サラ。
彼女の長い髪が冨岡の頬にかかる。
表情はあまり読み取れない。
だが、冨岡も魅了の効果からか視線を彼女から逸らせない。
普段見知っている白藤の姿はそこにはなかった。