第67章 澱(おり)の中で$
「白藤!!」
あの冨岡が色を無くして叫んでいる。
無理もない。
腹を食い荒らされてからの回復は時間がかかるだろう。
杏寿郎が白藤の体を支え直そうとしたが、槇寿郎に腕を捕まれ制された。
「藤姫は自然に回復する、後は冨岡殿に任せよう」
「父上、何を……」
「さもなくばお前まで『魅了』にあてられるぞ?」
過去に一度飢餓状態になり、三人の柱を相手にしたという藤姫の逸話を知っているため、槇寿郎は機転を利かせようとしたのだが。
「は?」
杏寿郎には伝わらないようだ。
「意味も分からぬか。冨岡殿、藤姫を頼む。血溜りは陽光が指せば消えるから構わずともいい。今は何より藤姫を……」
意識を手放しても尚、冨岡殿の羽織を掴むとは……
藤姫もいじらしくなったものだ。
「言わずもがなか。杏寿郎行くぞ」