第67章 澱(おり)の中で$
出産を目の当たりにしていない限り、男など役に立たないものだ。
「杏寿郎、藤姫を仰向けにしろ」
「父上それでは藤姫殿が苦しいのでは?」
「早くしろ、鬼子はおそらく先程から藤姫の腹の中を食い荒らしている……」
「何と!冨岡。少し手を貸してくれ」
冨岡と二人がかりで白藤の体を仰向けにすると、丁度月光が彼女の腹部を照らした。
ボコリ。
白藤の腹が不自然に歪む。
「うぐぅっーー!」
耐えきれなくなって来たのか白藤が血を吐きながら叫ぶ。
「白藤!」
「気をつけろ、そろそろ出て来る!」
グシャッ!
音と共に肉片が飛び散り、腹の中から鬼子が飛び出した。
月に向かい飛び出してきた鬼子の頭髪は薄桃色。
「ゴボッ……げほ、ヒュー……」
噎せこんだ白藤の呼吸音を聞いた鬼子がカッと目を見開いた。
瞳は藤色。