第67章 澱(おり)の中で$
べりッ。
音と同時に激痛が走る。
「っぐぅぅっ……!!」
絶え間なく口内から吐き出される血液に冨岡は不安になった。
出産で失血死するのではないかと。
冨岡の考えを他所に槇寿郎は冷静だった。
いや、いつ生まれ落ちるともしれない鬼子を見逃すまいと四方に目を走らせていたのである。
皮膚を割かれたような音がしたと思ったが、白藤の体の表面には外傷は見当たらない。
だとすれば、内側(内臓)か……
「ごふっ……」
先程から口からの出血が増えている。
「冨岡殿、藤姫に新しい布を」
「あ、はい……」
硬い表情を浮かべる冨岡を見て、槇寿郎は無理もないと思った。