第67章 澱(おり)の中で$
ドクンと鼓動が鳴る度に、お腹の中でゴポリと、水音がする。
その感覚が段々早くなってきて……
ボスン。
腹の中から鬼子が蹴ってくる。
早く出たいと蹴ってくる。
ボスン、ボスン。
「ふっ、ふっ……」
水面の波紋が泡立つような、急にふつふつと湧き上がってくる焦燥。
痛い……
腰と腹に響く鈍痛。
ボスン。
人の赤子も腹の中では足を動かす。
ただ、鬼子は一撃一撃が遥かに重い。
気がする。
「ゴホッ……」
咳き込んだ白藤は口内に広がる鉄の味に眉根を寄せた。
血反吐を吐くとはこの事か。
「白藤、血が……」
「はいひょ、ふへふ(大丈夫、です)」
情けない。
白藤が一人で奮闘していると言うのに、俺が取り乱してどうする。