第67章 澱(おり)の中で$
「兄上、冨岡さん、失礼します」
スッ。
「あ、父上も来られていたのですね。冨岡さん、鮭茶漬けをご用意してきました」
コト。
「ゆっくり食すといいぞ、冨岡」
「頂きます……」
はぐはぐ、ズズず。
パアァ。
食べ進めるにつれ、明るくなっていく冨岡の表情を見て杏寿郎は驚いた。
「!?」
あの、冨岡が笑っている、だと?
「どうかしましたか?兄上」
「………いや…」
二の句が告げんとはこの事か!?
「千寿郎の料理が口に合ったようで、何よりだ。取り急ぎでないなら藤姫を看ながら、今日はここへ泊まればいい……」
「父上?」
あの父が人を呼び止めるとは珍しい。
「ですが……」
「なに、客人の一人や二人……そろそろ起きる頃合いだな……」
「気にするな。顔を見てやってくれ。きっと喜ぶ」
杏寿郎の案内で瑠火の部屋へ通された冨岡は白藤の寝顔を見て力が抜けた。