第67章 澱(おり)の中で$
「はい。ご用意してきます」
「………すまん」
「ははっ!そう気を張らずとも良いぞ冨岡。それだけ藤姫殿が気がかりだったのだろう?」
「あぁ」
「杏寿郎、良いか?」
「父上。どうぞ」
「む?客人か。これはすまなんだ」
槇寿郎が冨岡に頭を下げる。
「父上、こちらは」
「お邪魔致しております。冨岡義勇と申します。ご子息同様、水柱を任されています」
冨岡も頭を下げ、挨拶を返す。
「ほう、水柱か………今、冨岡と申したな」
「はい」
「藤姫の恋人、だな?」
「えぇ。ですが、何故それを?」
まだ父に話した覚えのない杏寿郎は腑に落ちない表情を浮かべる。
「なに、今しがた寝言を呟いてな。穏やかな顔で『冨岡』と」
「そ、うでしたか……///」