第67章 澱(おり)の中で$
俺は……
「俺は運良く生き延びただけだ。あんな惨めな最終選別の後で、どれだけ鬼を倒しても……ましてや柱など……」
冨岡はこんな想いを。
「冨岡、君は悪くない……」
「っ……」
煉獄の手が冨岡の肩に乗せられる。
「柱全員、何かを背負っているが、君は何も語らなかったから……気づいてやれず、すまん」
「いや、謝らないでくれ。煉獄」
何故だろう。
ようやく、肩の荷が降りたような、そんな感じがした。
「冨岡。君は藤姫殿と会ってから色々と変わったな」
「変わった?」
「何がとは言えないが、どことなく、柔らかくなった」
「だとすれば、白藤のおかげだな」
「君も、そんな顔をするのか」
「どういう意味だ?」
表情の乏しい男だと思っていた。
だが、冨岡もやはり人だった。
先程の泣き出す手前の少年の様な表情(かお)をする一面も持ち合わせていたのだ。