第67章 澱(おり)の中で$
「泣いていい……今まで張り詰めていたのだろう?」
槇寿郎は白藤を抱き抱えたまま、布団に腰を下ろした。
トクンと響いてくる、槇寿郎の鼓動が心地いい。
「泣きたいだけ、泣くといい……」
まるで幼子か何かのように、白藤は泣いた。
いつの間にか、白藤は槇寿郎の腕の中でぐっすりと眠っていた。
「寝顔だけは、昔と変わらんな……」
ツンと頬を指でつついて見るも白藤が起きる気配はない。
「父上」
「杏寿郎か」
「藤姫殿は落ち着かれましたか?」
「大事無い。今は寝ている。俺が後で部屋に運ぶから心配要らん」
「そうですか……」
あの頑なだった父が……
こうも、藤姫殿に尽くすとは……
「兄上。白藤様にお茶をと思ったのですが、見当たらなくて。何処においでか知りませんか?」
「藤姫殿なら父上の部屋だ。大事な話があるようだから、少しの間そのままにしてやってくれ。そのお茶は俺が飲もう」
「兄上はそれでよろしいんですか?」
「何がだ?」
「このままだと父上に白藤さんを取られてしまいますよ?」
「ぶっ!!ゴフっ、千寿郎?」