第67章 澱(おり)の中で$
杏寿郎がお礼を伝えると槇寿郎も頭を搔きながら、「スマンな」と一言。
「食べるとするか。今日は栗おこわか」
季節物を使うのが上手いと思いながら杏寿郎と槇寿郎が盆に手を伸ばす。
「はい。米屋の三笠さんの女将さんから聞いて作ってみました」
「そうなのか。料理上手で有名な三笠の女将さんから……千寿郎は凄いな。俺には真似できん!」
と、杏寿郎が笑う。
栗おこわのおにぎりを食べながら、うまい、うまいと連呼する杏寿郎に対し、槇寿郎は無言で食べる。
口がしっかりと空になってから美味かったと口にした槇寿郎は杏寿郎に
「お前も二十歳になったのなら、もう少し落ち着いて食べなさい」
と窘(たしな)めた。
槇寿郎の変化に驚きつつも、息子達は久方ぶりの親子での会話に頬が緩んだ。