第67章 澱(おり)の中で$
にこにこと微笑む千寿郎を見ながら、一口粥を口にする。
「美味しいです……」
口どけに優しい味が広がる。
これなら食べられるかもしれない。
冨岡の屋敷では何かと自分で台所に立つ事が多いのだが、煉獄家では千寿郎という心強い料理人がいてくれる。
ぱくぱくと食べ進め、何とか半分ほど食べる事が出来た。
数日ぶりの食事が本当に美味しかった。
「では、失礼します」
「ありがとうございます。美味しかったです」
「また違う食材の粥をお持ちしますね」
千寿郎は白藤の部屋から下がり、鍛錬中の杏寿郎と槇寿郎のいる道場へ。
おむすびと漬け物を載せた盆を持って来た千寿郎は久方ぶりの親子での稽古風景を目にした。
技こそ出ていないが打ち合い稽古は真剣そのもの。
千寿郎は頃合を見計らい、槇寿郎の声がしてから道場に顔を出した。
「父上、兄上。お疲れ様です。朝食です」
「千寿郎、ありがとう」