第65章 慟哭$
槇寿郎と瑠火が婚姻を結んだ時、篝はとても喜んでいた。
寛寿郎も同様だった。
ようは、浮かれていたのだ。
槇寿郎と瑠火の祝言を今か今かと待ち望んでいた時、篝が流行病に倒れた。
医師曰く、『結核』とのことだった。
若夫婦の為に増築中だった離れに二人で移り住む事に決め、篝の面倒は全て寛寿郎が看ていた。
身体を拭いてやり、湯桶を持ってきて彼女の髪を洗ってやったりと寛寿郎は甲斐甲斐しく篝に尽くした。
篝は起き上がれる時間はずっと書を書いていた。
それが寛寿郎に宛てた彼女の感謝の手紙だった。
寛寿郎が剣術なら、篝は書道だ。
わざわざ彼女の元に手習いに来る者も居たくらいだ。
彼女は近所からも慕われていた。