第65章 慟哭$
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杏寿郎に連れられてやって来たのは煉獄家の離れ。
晩年の寛寿郎(杏寿郎の祖父)が過ごしていた部屋だ。
「まだ微かに寛寿郎様の匂いがしますね…」
寛寿郎は齢七十にしてこの世を去った。
命日は杏寿郎が炭治郎たちと共に無限列車を下車した日。
まるで、杏寿郎の身代わりになったようだと槇寿郎は語っていた。
今でも覚えている。
快活でどんな事でも笑い飛ばしてしまう男だった。
『カッカッカッ!』
また聞こえて来るのではないかと錯覚してしまう程に。
「藤姫殿。少しそこで待っていてくれ、今布団を敷く」
「ありがとうございます」
杏寿郎に促され、文机の脇に備えられた座椅子に腰掛ける。