第65章 慟哭$
「藤姫……」
「確かに、今代の柱の方々は粒揃いです。ですが、若さゆえに『迷い』が生じた時、対処出来なければ、腹の子に食い散らかされるやもしれません。無論母体である私の腹も食いちぎるやも……」
「藤姫殿……」
杏寿郎が白藤の肩に手を添える。
「お前の覚悟は分かった、藤姫よ……」
「はい」
「腹の子はあとどの位で育つのだ?」
「胡蝶様と藤屋敷の主治医の見立てではあと二か月、と言われております」
「そうか……杏寿郎」
「はい、父上!ごほん!」
若干声が裏返ってしまった。
だが、誰も咎(とが)めはしなかった。
「離れに藤姫を連れて行ってやれ」
「では……」
「二か月、お前の面倒はここで診ることとする。腹の子は俺が始末する。それで相違無いな?」
「はい……!」