第65章 慟哭$
「藤姫殿、頭を……」
「いいえ。槇寿郎様にしか頼めないのです。今代の柱の1番の年長者は悲鳴嶼様ですが、かの方は本来一番気の優しい方なのです……『慈悲』を掛け間違えれば、私の腹の子は脅威になりましょう……」
「………頭を上げろ。藤姫。俺の鈍(なまくら)ではもう、鬼は斬れん……」
「いいえ、斬れます。どんなに落ちぶれていようと、怠けていようと……貴方の腕は落ちていません」
「何故そう言える。お前さんが俺の何を……」
「寛寿郎様が仰っていました。『俺の倅(せがれ)は不器用だが、性根は素直な男だ』と。確かに瑠火様を亡くされて傷付いたでしょう?お酒に逃げたとも聞きました。でも貴方の事です、刀の手入れだけはしていた筈です……」
「………」
そう言われれば、日輪刀は父の自室にあるはずだ。
「槇寿郎様にしか……どうか、お聞き届け下さい……」