第65章 慟哭$
「父上」
「杏寿郎。お前に、藤姫の腹の子を躊躇(ためら)いなく、屠(ほふ)る覚悟はあるか?」
「やはり、気付かれていましたか……」
「藤姫よ、その腹の子の親である鬼の顔は覚えているか?」
「ええ。名前も姿も覚えております。特徴からして、恐らく杏寿郎様が相対(あいたい)した鬼で相違(そうい)ないかと」
俺と戦った鬼……
「猗窩座か……?」
「ええ。間違いないかと……」
「杏寿郎。怒りに任せて、我を忘れるな……」
「ですが、父上……!?」
父の瞳にも怒気の色を見て、俺は驚いた。
その眼光は、父の全盛期のようで……
「父、上……」