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鬼滅の刃R18 藤の花嫁

第65章 慟哭$


とくん。

温かい、音がする。

槇寿郎の掌から人間の優しい鼓動が伝わってくる。

杏寿郎はまさかという顔のまま固まっていた。

あの父が御館様以外に頭を下げるとは……

「私は、私の仕事をしたまでです」

「……あぁ。俺も幾度も世話になった」

あの頃と同じ、優しい瞳。

「槇寿郎様も、お変わりないようで安心致しました……」

何やらこの場に居るのは場違いなのではないか、と思い始めた杏寿郎。

二人の姿は母が在りし日の様に見える。

だが、と杏寿郎は頭を振る。

二人は夫婦ではないが、他者よりも余程通じあっていたのではないかと杏寿郎は推察した。

父が母を蔑(ないがし)ろにする様は見たことがない。

とすれば、この二人の関係は俺が生まれる以前からのものなのだろう。

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