第65章 慟哭$
幾度となく訪れた馴染みの屋敷だ。
煉獄の屋敷の構造は隅から隅まで知っている。
槇寿郎が瑠火と縁談を持ちかけられた際に相談されたのだ。
槇寿郎のような男性でも色恋となれば普通の"男"なのだと感じた。
「瑠火はとても素敵な女性だ」
「良かったではありませんか」
私はほんの少しだけ寂しいようなそんな小さな胸の痛みを感じていた。
されども、私は『鬼』。
どう頑張っても、『人間』には戻れない。
だから、人間に望む物は"性"だけ。
私は異端だから。
『人間』にも『鬼』にもなり切れない。
「それで、槇寿郎様は私との逢い引きの回数を減らすという事でしょう?」
「何故、それを……」
「煉獄の方々は分かりやすいですからね」
ふふと一つ含み笑いをする。