第65章 慟哭$
あぁ、痛々しい。
あまり寝れていないのだろうか?
目元にクマができている。
「父上が君と話をしたいと言っているんだが、少しだけ時間をくれないか?」
「ちょっと待て、煉獄」
冨岡は体調の悪い白藤を心配して俺に抗議しているのだろう。
「冨岡。君にも後で話がある。だが先に藤姫殿だ。御館様への許可は取ってあるし、屋敷には俺が背負って運ぶから安心してくれ」
「だが……」
食い下がる冨岡の肩に手を置いて、俺は父上に言われた言葉を伝えた。
「腹の子は人の子に非ず」
煉獄は冨岡にそっと耳打ちした。
下を向いた冨岡の表情は読み取れなかったが、彼が打ちひしがれているのは分かる。
「スマンな、冨岡。彼女を借りる。藤姫殿、参ろうか」
俺は藤姫殿を連れて冨岡の屋敷を出た。