第64章 絡む糸
そんな話題になっているとは露知らず、白藤は動けない自分に対して苛立ちが募っていた。
「どうして……今なの……」
白藤は布団に横になったまま、一人涙した。
この胎の中に居るのは間違いなく、『鬼』だ。
心音はまだ聞こえないが、気配がする。
何故、鬼の子なのだ……
産むのなら……
「義勇さん……」
お腹に手を置き、白藤は愛しい人の名を呼ぶ。
その様子を、宇髄は見ていた。
白藤の腹を気にする仕草や冨岡の名を呼ぶ様子から見て、明らかだ。
腹に居る。
心音は聞き取りずらいが、時折ノイズが混じっている。
「……どちら様ですか?」
っと、気配に気付いたのか。
裏庭から姿を見せた宇髄は縁側に腰を下ろした。