第3章 藤の花屋敷の鬼女$(冨岡裏)
「怒られてしまいました。抱いて貰うにはどうすればよいでしょう?」
このままふて寝をされてしまえば、今日の食事にありつけないのと同じなのだから。
何か考えなくては。
うーん、仕方ない。
今日は血鬼術無しでいくしかない。
素で男性に抱かれるのは何年ぶりだろう。
まずは、堅物であろうこの人の傷の手当をする事にしよう。
「冨岡さん、先程は不快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした。湯桶を用意致しましたので傷口を消毒しましょう」
ちゃぷ。
冨岡の傷口は右足のふくらはぎ。
柱の方々は鍛え方が違うので、手傷が少ない。
生傷が耐えないのは、人の身で鬼を狩るから。
まあ、誰かを守るには戦い方も変わるだろうから、絶対に怪我をしないとは言い切れない。
それにしても、呼吸法で傷口の出血も減らし、尚且つ毒も注入されなかったのだから、これなら治りも早いだろう。
この屋敷での滞在もそう長くはないはず。
機会は今夜一日限りと考えられる。