第64章 絡む糸
「っ……」
急に体を起こしたせいか、目眩に襲われ、数歩後ずさる。
「はぁ……」
体調が悪いにも程がある。
これではまるで身重のようではないか。
そう考えついて、白藤はいいやと頭を振る。
人とて、産まれてくるまで、腹の中で十月十日かかるのだ。
昨日の今日で孕んだかどうかなど分かりはしない。
人でない私は月のものすら来ていないのだ、そんな体で子を孕むなど……
ドクン。
心臓が早鐘を打ち始める。
人の頃とは違う、定期的ではない心音が、まるで警鐘のように鳴り響いている。
「鬼は子孫を残せない……」
口に出して、違和感を払拭しようとする。