第64章 絡む糸
「白藤……」
「義勇さん、帰りましょう」
「あぁ、そうだな。胡蝶、世話になった」
「いいえ、いつでもどうぞ」
蝶屋敷からの帰り道。
二人は無言だった。
日暮れ時で白藤の顔がよく見えない。
調子の悪い白藤を早く休ませたい想いもあるのに、胸に何かがつかえて、うまく言葉に出来ない。
結局、何も話さないまま屋敷に着いてしまった。
義勇は門前で肩を落とす。
こういう時、亡くなった俺の朋友(とも)ならば、気の効いたことを言えたのだろうが……
「とりあえず、中で……白藤?」
先程よりも、白藤の顔色が悪い。
俺も白藤も冷や汗が浮かぶ。
冨岡は狼狽(うろた)え、彼女を抱えて急いで屋敷の中へ駆け込んだ。