第63章 春告げ鳥が鳴く頃に$ 不死川激裏短編
「……らしくねェ…」
自分の中にこんな感情があったのか?
焦れるような、はがゆい想い。
この手で母親を殺してから、誰かを好きになる資格なんてないと思ってた。
「お前さ、ちゃんとコイツに伝えてやったら?」
もう気付いてんだろ?
と、宇髄の視線が俺を射抜く。
『不死川くん』
頭の片隅でもう居ないはずの彼女の声がする。
今思えば、一目惚れだった。
が、当時の俺は気づいていない振りをした。
カナエの一挙一動を気にした。
周りが噂をするくらい、俺は彼女を見つめていた。
共に任務に当たることはなかったが、負傷で蝶屋敷に呼ばれることはあったから、それだけで満足していた。
彼女が亡くなるその日までは--