第63章 春告げ鳥が鳴く頃に$ 不死川激裏短編
「…………」
忍びのしきたりなんざ知らねぇが、宇髄がコイツに本気なのは何となく分かった。
コイツを触る時の柔らかい表情。
これまで何人たらし込んだんだかとも思うが……
「俺は………」
はっきり言えば分からない。
白藤は健気で素敵だとは思うが……
「不死、川さん……」
寝言か?
「寝言聞いても分かんねぇ?コイツは……お前が好きなんだよ……」
白藤が?
「俺は……」
「何迷ってんだよ。いつもみたいに、はっきりしろよ」
「宇髄?」
宇髄の方こそ、らしくない。
いつもの彼は付け入る隙がなく、のらりくらりと煙に巻くはず……
それだけ、本気ってことか……
『不死川さん』
寝言で名を呼ばれ、正直ドキリとした。
いや、何より……
あの日泣いていたはずの彼女が、今鬼狩りをしていて、俺を好いていると……
あの時、お互い名乗らなかった。
それでも、こうして巡り会えたのは……