第63章 春告げ鳥が鳴く頃に$ 不死川激裏短編
得体の知れない何かが近付いてきている。
怖い。
再び、震え、声を押し殺すように、口を押さえる。
「物音立てるなよ。今から俺がアイツを……」
ガシ。
「あァ?」
「っ、どこに……」
ぽん。
彼の手が私の頭を撫でる。
「心配すんな。お前は俺が守ってやる。さっさと倒してくるから、目を瞑ってじっとしてろォ」
「………はぃ」
彼は私を置いて外へ。
目を瞑っている間、途切れ途切れに外からの音が聞こえる。
金切り声のような叫びと、ゴウゴウと唸る風の音。
まるで、風で全ての音を遮断しているような……
しばらくして、風の音が止んだ。
チンと、小さな音がなる。
今思えば、刀を納めた音だったのだろう。