第63章 春告げ鳥が鳴く頃に$ 不死川激裏短編
小窓から差し込む月光で、傷だらけの腕が見える。
ゆっくり振り返ると、見えてきたのは白みがかった髪に紫暗の瞳。
初めて彼に会ったのに、不思議と怖くなかった。
「悪ィな。怖ェだろうが、少しだけ大人しくしといてくれや」
ほんの少し粗暴な口調で彼は遠慮がちに言った。
私は無言で頷いた。
彼の顔を見たことで少しだけ、緊張が解けたからだ。
よく見たら睫毛も長いし、格好良い。
傷が多いのが気になったが……
なんにしろ、恐怖が緩和された。
ヒタリ。
何かの気配を感じた。
カサカサ。
こちらに近付いてきている。
「生き残りを探してるなァ……」
生き、残り……?
胸がざわつく。
先ほどから家の者の姿が見えない。
この青年は味方のようだが、他に何かが迫って来ている。
私に身を守る術はない。