第63章 春告げ鳥が鳴く頃に$ 不死川激裏短編
「別に……」
まぁ、宇髄さんになら、知られても良いか。
からかわれるけど、ひろめはしないんだよね、この人。
「ってか、何でアイツな訳?」
それは当然の疑問だろう。
面と向かっての接点はほとんどない。
任務も一緒にならない。
でも、傷だらけの彼に助けてもらったのだ。
鬼という化け物から救いだしてくれた彼の面影が忘れられない。
助ける側が何でそんなに傷だらけなのか聞いたら……
『俺は稀血つって鬼が好む血の持ち主でなァ、俺が血を流すと鬼が酔っぱらっちまうらしィ』
「………」
変なのと思いながら、彼の後ろ姿を眺めた。
懐かしい。
でも、きっと不死川さんは覚えていないんだろうなぁ。
「昔、助けてもらったんですよ」
「そうか」
あの時、鬼に襲われ、傷を腕に刻まれたため、私の婚約は破談になった。
結果、鬼殺隊に入っているのだから、嫁入りはそう容易くはいかないだろうし……