第62章 スルタン企画 絶対君主には成れずとも下巻2完結$
「……よかった、義勇が無事で……」
「ほら、まだ泣いちゃダメよー。化粧が崩れるわ」
宇髄の宮で白藤は三姫から着替えと化粧を施されていた。
夜空を思わせる青い衣装は足元に向かうほど淡い色合いになる。
髪止めには星と月をあしらったもの。
「しっかり綺麗にしなきゃね」
まきをが張り切って髪を飾ってくれる。
雛鶴は衣装と化粧担当。
須磨は香水を選んでいた。
「どんな匂いが良いかしらー?」
「義勇はあまり華美な匂いは好きじゃないようで……」
「そう、なら自然な香りの方が良いかしら?これなんてどうかな?」
「「………」」
それ、一番高いやつ。
と二人は思いながらも口をつぐむ。
「どう?」
「良い匂いです」
「月下美人の華から抽出されたものよ、白藤さん美人だから映えるわね、きっと」
雛鶴の言葉に顔を赤らめながら、準備は進む。
義勇が迎えに来たおよそ30分後に雛鶴と一緒に宮に戻ってきた白藤は緊張した面持ちで扉をノックする。