第61章 藤姫の帰還
ここまで導いてくれた錆兎にも鱗滝師範にも認められるような『柱』になるためには……
「鬼になるわけにはいかないんだ」
「はっ。鬼狩りはつくづく芸がない。人間のままでは俺たちには勝ち目がないと、何故気付かない?本当に、愚かだよ。鬼狩りは」
嘲笑する猗窩座に対し、三柱は目配せをした。
今回の合同任務の目的は白藤の奪還。
上弦の頸は惜しいが、この面子で止めをさせるかと言われれば厳しい。
猗窩座の攻撃は冨岡に集中しているとはいえ、胡蝶と甘露寺も下手に動けない気迫を奴は放っている。
退却が望ましいが……
「名残惜しいが、止めといこうか。冨岡義勇。術式展開 破壊殺・滅式」
チャキ。
「シィーーー、水の呼吸 拾ノ型 生々流転」
何故かは分からない。
でも、必死に鬼に向かう彼の姿を見ていたら、在りし人の背中を見た気がした。
フゥー。
「血鬼術・藤霧」
藤の花粉を纏った霧が辺りを包む。
「白藤さん?」
「しのぶちゃん、冨岡さん、退却しましょう」
「げほっ。逃がすか……」
猗窩座の手が白藤に向かって伸ばされる。