第61章 藤姫の帰還
白藤を胡蝶に任せ、冨岡は猗窩座に向き直る。
『義勇、水面(みなも)だ。水面を思い浮かべろ』
鱗滝さんの言葉だ。
心を平穏に保つ。
感情に流されるな、今必要なのは……
折れぬ『心』。
ピチャン。
朝露に濡れた木の葉の上で蛙が一匹跳ねた。
それが合図になった。
「術式展開 破壊殺・乱式」
「水の呼吸 玖ノ型 水流飛沫・乱」
猗窩座の打撃を冨岡が剣激で受け流す。
「シィーーー!」
「面白い。水の柱とは幾度も拳を交えてきたが、俺の拳を押し返してくる技量のある者はそうは居なかった!」
猗窩座はククッと笑った。
「今年の柱は杏寿郎といい、粒揃いだな。素晴らしい提案をしよう。冨岡義勇よ、お前も鬼にならないか?」
「俺は鬼にはならない!」