第61章 藤姫の帰還
「渡さない。お前たちには絶対に」
冨岡が白藤を抱えながら、猗窩座に言い放つ。
何だろう、この人に抱き締められるとほっとする。
すん。
この匂い。
覚えがあるような気がする。
でも、分からない。
頭に靄がかかったみたいに、急に不鮮明になる。
この人は、誰?
彼は私を知っているようだ。
では、私は……?
私も知っているはずだ。
だって、こんなにも心が騒ぐのだから……
「鬼を殺すのが鬼殺隊の仕事だろう?なら、そいつの頸を狩ったらいいだろう?どうした?お前たちには当たり前のことだろう?」
猗窩座の問いに反論したのは胡蝶だった。
「私たちは人に悪さをする鬼を殺すのが仕事です。でも、彼女はあなた方鬼から見ても半端者でしょう?どうしてそんなに、拘るのですか?彼女は十二鬼月でも無いのに」