第61章 藤姫の帰還
霧が途切れ、光が差し込んできた。
「なるほど、確かに集落があったようですね」
胡蝶が言うとおり、ぽつぽつと廃屋が並んでいる。
こちらが集落へ向かう最短の道だったのだろう。
「とりあえず辺りを見ていくぞ」
「廃屋の中もですか?」
怪訝そうな胡蝶に対し冨岡が答える。
「白藤は回復が早いからな。歩けるようになって雨風をしのぐためにどこかに入り込んでいてもおかしくない……と、思う」
「そうですか。なら、私はこちらを。冨岡さんは川を渡った向こう側をお願いしますね」
「了解した」
そういう訳で、二手に分かれて、白藤を探す。
冨岡は飛び上がり、一息に向こう岸へ。
がさがさ。
川岸の葦の葉を掻き分けながら奥へと進む。
廃屋の屋根が抜けていたりすると、隙間から光が差し込み、草木がおい茂っている。
明るい内に陽光が差すような場所には居ないだろう。
冨岡はできるだけ暗がりな場所を探し始めた。