第61章 藤姫の帰還
空が白み始めた頃。
「「冨岡さん!」」
鎹鴉の案内で、胡蝶と甘露寺が狭霧山に到着。
冨岡は谷底に昔集落があったことを聞き、その入り口を探していた。
狭霧山は一年中霧が立ち込めているので、視界がきかない。
「それで、冨岡さん。その集落の見当はついているのですか?」
胡蝶の問いかけに、集落の入り口と思われる道の前まで来た三人。
「道が二つに分かれていますね」
「あぁ。だが、悩んでいる暇は無い」
「白藤ちゃんの無事が最優先だものね。私は左に行くわ!しのぶちゃん、冨岡さんをよろしくね」
気合い充分といった風情で甘露寺が左の道へ突き進んで行った。
「行ってしまわれましたね。まだ合同の合図も決めていなかったのに」
「そんなのは鴉に任せればいい。行くぞ」
「はいはい」
こんなに余裕の無い冨岡さんを見るのは初めてですねぇ。
貴重です。
胡蝶と冨岡が右の道へ曲がる。