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鬼滅の刃R18 藤の花嫁

第60章 谷底の社$


「今のお前は一人じゃない。助けてほしい時は声をあげろ。しっかりしろ、それでも水柱なのか?義勇」

ずっと会いたかった。

でも、面と向かって会えなかった。

お前を差し置いて柱だなどと、戯れ言だと……

名を呼んでしまえば、消えてしまう幻かもしれない。

謝らなければいけない。

たくさん。

今の今まで、ここに立ち寄れなかったこと。

あの日、お前の様に立ち上がり、刀を振るうことが出来なかったこと。

哀しみ、己の不甲斐なさ、様々な感情が冨岡の胸の中に渦を巻く。

どうして、いつもこうなんだ。

お前が目の前にいるのに、謝罪もお礼も言えない。

トン。

彼が俺の肩を掴む。

「いいんだ。俺のことはいい。お前は彼女のことだけ考えろ。お前にとって大事なんだろ?鴉を飛ばせ。本部に連絡だ」

宍色の髪の少年はあの時の姿のまま、冨岡の前でニヒっと笑って見せた。

「じゃあな、義勇」

「錆兎!…すまない……ぁ、ありがとう…」

「泣くなって。また来いよ」


ありがとう、錆兎……


俺はもう、逃げない。

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