第60章 谷底の社$
「鬼が落ちてくるのは、初めてだな」
弱った鬼を食べる者がいることを彼も知っている。
だが、猗窩座は彼女を喰らおうとは思わなかった。
その内、意識を取り戻し、いずこかへ立ち去るであろう彼女を猗窩座は捨て置くことにした。
鬼ならば、弔いも必要ない。
鬼ならば、喰らう必要もない。
猗窩座は彼女をその場に横たえたまま、山中へ向かった。
目的は『青い彼岸花』である。
青い彼岸花は、鬼舞辻無惨が鬼を増やしながら、血眼になって捜索しているモノに他ならない。
真偽のほどは分からないが、神秘の霊薬(日光を克服する)を作るための材料になるのだそうだ。
たかが、野花。
だが、その存在はようとして知れず。
彼は宛も無く、それを探し続けている。