第60章 谷底の社$
$$$
日暮れから活動すると、野山は月明かり以外頼りがなく、薄暗い茂みの中では、白いもの以外はどれも黒ずんで見える。
陽の下でなければ色も分からない……
月が天中にかかった頃、猗窩座は根城である谷底の社へと向かった。
社の脇の血溜まりの中に彼女の姿はなかった。
行ったか。
社の中へ足を進める。
ここは長らく人に管理されてなく、谷底のじめじめとした湿気によって、社の所々が腐食している。
黴臭い。
けれども慣れてしまえば、匂いも気にならない。
ここは猗窩座にとっての根城でもあるが、精神統一の場所でもある。
「スゥ---…」
呼吸を整え、精神を研ぎ澄ます。
カタ。
物音と眷族の匂い。
まさか。
カラ。
元は社務所だった場所に彼女はいた。
何かを探しているのか、ただ目新しいのか。