第58章 絶対君主には成れずとも$ 下巻1
「私のことは朔で構いませんよ」
「ですが」
「『朔』が良いんです。義勇様に頂いた名前なので」
「そうなんですか。では、改めまして。冨岡様、朔様。我が国のために、ありがとうございます」
「あの…」
姉妹二人で蝶の羽柄の羽織を着ているので判断は髪の毛の長さだけになるのだが。
どうやらしのぶが声をかけてきたようだ。
「何だ?」
「良かったら今日はここに泊まりませんか?」
確かに、夜移動するにはリスクが高い。
「だが、良いのか?俺たちは正式な来賓ではないぞ?」
部屋を用意してくれるのはありがたいが……
「構いませんよ、一人ずつ個室をお貸し致します」
「……?別に同室でも構わないが?」
「いいえ!こちらにも品位がありますので!」
「………そうか?」
こうして、今に至る。
来賓用の個室なのだろう、豪奢な装飾のある個室を誂えられたものだ。