第58章 絶対君主には成れずとも$ 下巻1
「姉さん!」
「しのぶ、どうしたの?」
「どうしたも、こうしたもないわ!いきなり婚約なんて!」
「まぁ、良いじゃない。決まった訳ではないし。ああいうのも、おしゃべりのうちでしょう?」
「………………」
一体、何なんだ。
この状況は?
ようやく薬も切れてきて、冨岡も正気を取り戻し始めた。
最初の内は尋問に近かったやりとりもカナエの数々の発言によって、結局は婚約話に。
冨岡はますます女のなんたるかが分からなくなってきていた。
「帰っていいか?」
「待ちなさい!」
しのぶに一喝された。
だが、他にどうしろと?
冨岡の眉間にシワが刻まれる。
そうして思考を巡らせていると、ずっと黙々と作業していたカナヲが、冨岡と朔に興味を示した。
「ところで、その方たちは何故こちらにいるのでしょうか?」
もっともな質問だ。
案外、この姉妹は一番下が賢王なのかもしれない。