第58章 絶対君主には成れずとも$ 下巻1
しのぶったら、焦っちゃって、可愛いわー。
「胡蝶、すまんが俺には妻がいる。婚約の話はすまないが……」
「え?」
嘘、断られた?
「フラムは一夫多妻制ではなかったかしら?」
「あぁ、だが俺はその仕組みに違和感を……何だ?」
しのぶとカナエからじっと見つめられる。
「珍しいタイプねー、君は」
たった一人を思い続けるなんて。
大抵の男たちは妻だろうが妾だろうが、沢山の女たちを侍(はべ)らせ、悦に浸るというのに。
まぁ、だからしのぶが惹かれたのか。
ぶっきらぼうなのは、どこかの誰かにそっくりなのになー。
カナエは冨岡に白髪の少年の面影を重ねる。
いつも傷だらけなのよね。
どうしてるのかな?
私は戦に行かないから、彼の姿を見る機会がめっきり無い。