第58章 絶対君主には成れずとも$ 下巻1
「隠す?」
「うふふ。話してくれないなら、彼女は私が貰うけど?」
彼女?
朔のことか?
「それはできない。俺と朔が同契したからにはその権利を他人に譲渡できないからだ」
「あらー、そうなの?なら、君が死んだら……彼女の持ち主じゃなくなるのね?」
「そんな事させません!」
「朔、落ち着け」
「義勇様を傷つけたら…許しませんから…」
「へぇー。随分と強い結び付きね。恋人なの?」
「違う。俺には妻がいる…」
「ふぅーん」
朔の瞳の闘気が薄れた。
彼女は冨岡の言葉に傷付いた。
これは使える。
「冨岡くん。君は何をしたいの?」
私の前で嘘をつける人間は居ない。
私もしのぶも絶世の美女と持て囃されているのだ。
美しさには少し自信がある。
冨岡の手に触れ、じっと見つめる。