第58章 絶対君主には成れずとも$ 下巻1
「ところで、聞きたいのだが」
「何だ?旅の御人」
「あぁ、そうだ。俺達も名乗って居なかったな。俺は冨岡義勇。こちらは朔だ」
「朔です」
「そうか。二人とも良い名だな」
悲鳴嶼さんは柔らかく笑った。
心根のキレイな方なんだろう。
「隣国に流れている水の流れに異変が有るようでな。何か心当たりはあるか?」
「ここは見ての通り、異常はないが……一月前に大水が出た。もしかしたら、その時、流れが変わった場所があるのやもしれん」
「そうか。ならもう少し先に進んでみる。馳走になった」
「いいや。久々の客人との話、楽しかった」
「帰りにまた寄ろう」
「あぁ、気をつけてな……」
俺はまた朔と共にカンバダに跨がり、隣国との国境に向かった。