第58章 絶対君主には成れずとも$ 下巻1
「熊が出そうだな」
義勇様!
それは思ってても言わない方が!
「よく分かったな、ここの元の主の大熊は人の味を覚えてしまってな。私が退治したのだ」
え?
正解なの?
熊の巣穴。
「何も脅威は熊だけではないのだがな。アレを退治してから、私も人々の脅威になってしまった」
それもそうか。
見えないはずのモノを目の前で正確に仕留める事が出来たなら。
本当は見えるのではないかと疑われてしまうのかもしれない。
「…………」
「悲鳴嶼さん…」
「さぁ、昼飯としよう。山菜に茸を採ってきたから今日は汁物だな」
「手伝います」
「ありがとう。ではそちらに味噌があるから鍋に溶かしてくれるか?」
「はい」
朔の手伝いもあって予想より早く、茸汁が完成した。
「さて、まずは大地の恵みに感謝を。いただきます」
「「「いただきます」」」
自然の食材のみの食事だというのに、その味わいは風味豊かで。
冨岡は噛み締めるようにその一杯を飲み干した。