第58章 絶対君主には成れずとも$ 下巻1
「名乗るのが遅れてしまったな。俺は悲鳴嶼行冥。そっちは嘴平伊之助という。こう見えても俺は猟師をしていてな」
猟師、逞し過ぎる猟師。
逆に似合いすぎるくらいなのだが。
「親分はスゲェんだぜ?目が見えなくても俺やトラ丸が居ないのに気がつくし、猟銃の標的を外さねぇんだ!」
「目が?」
「あぁ、俺は昔から感覚が鋭くてな」
「はぁ」
盲目で猟師……
「じゃあ、獣を捌くのは伊之助君が?」
「俺は食う専門だ!ガハハッ!」
と、いうと悲鳴嶼さんは余程器用なんだろうなー。
悲鳴嶼さんに案内されたのは岩場の洞穴。
まるで熊の巣穴のようなソコで二人は生活しているらしかった。