第58章 絶対君主には成れずとも$ 下巻1
どうやら猪頭は面識が有るようだ。
親分と呼ぶくらいだから、やはり山賊の……
「伊之助、あまりトラを酷使するな。こう見えて一番の年配なのだ」
トラ……?
んんっ?
「親分、今イイとこなんだから、ちょっとだけ待って……聞けって!」
「南無……」
「義勇様…」
「何だ、朔……」
「もう、戦いの空気ではない、ですよね?」
「…………そうだな。戻れ」
チン。
剣を鞘に納め、朔の臨戦態勢を解くと人形に戻った朔が川岸に着地する。
フワッ、ちゃぷ。
「ほら、アレだって!親分!!」
「………その女、エディルレイドか?」
「何だ、そのエディルレイドって?」
エディルレイドという言葉を知っているのは限られているはず……
まさかコイツらもノアズアークの……
ぐぎゅーー。
「「…………………」」
この緊張感の欠片の無い音は。
「あー、腹減った!」