第1章 今宵、蜜に溺れてく
「………ねぇ理緒?」
「━━━━ハイ」
やっぱり、来た。
満員電車の人混みの中、わたしを囲うようにドアに手を付く匠の声が、降ってきた。
「約束って?」
「ああ、うん。………さぁ、なんだろう」
あははー、なんて。
視線を泳がせたところで誤魔化せるはずなんて、なくて。
「理緒」
低く唸るような声が、わたしの動きを一瞬にして、制す。
「約束って?」
「…………」
だって。
内緒って。
『お前に言ったらすぐバレんだろ』
ほらやっぱりバレた。
とか、言われるの絶対やだ。
「理緒」
ビクン。
低く唸るような声がすぐ近く、耳元で、聞こえて。
太腿に、匠の掌が触れた。
「た、匠?」
匠の掌の動きを封じようと、慌てて手を伸ばす、けど。
お構いなしに掌は上へ上へと、上がっていく。
「━━たくみ、やだ……っ」
「しー、びくびくしてるとバレちゃうよ」
「………っ」
体を寄せて、両足の間に匠の右足が挿しこまれて。
完全に動きを、封じられた。
睨みあげるように匠を見上げみれば。
「あと15分で決めて」
「じ、じゅうご?」
「次の駅着いたらトイレ連れ込むから」
「━━━━っ」
な……っ、に。
スカートの中、指、挿入って……っ
「で、約束って?」
「…………っ」
「……ふぅ、ん、そう」
「っ!!」
感触を嗜むように触れていた掌は、下着の中へと、伸ばされて。
つぷ、と。
指先がいとも簡単に、なかへと沈み込む。
「すぐ挿入るね、理緒、やらし」
耳元へ、吐息を押し込みながら脳まで犯していく、匠の、声。
「どこまで挿入る?」
「たく、み、やだ、お願い……」
「ねぇ理緒。見られてるよ?まわりの人、気付かれちゃってるね」
「………っ」
羞恥心を煽る匠の言葉は、さらに涙腺までも犯していき。
恥ずかしくて顔、あげらんない。
「見られて興奮する?すごいよ?なか、トロトロ」
「………ふ、っ、ぅぅ」
ぎゅ、って。
唇を噛みしめて、匠の胸元へと頭を預けた。
「2本、挿入るかな」
「だ、だめ……っ、お願い、許して匠」
「………」
匠の腕を両手で掴んで。
一瞬動きを止めた匠を、見上げる。
「どーしようかな」
不敵に笑みを浮かべる匠の瞳が、意地悪に、揺れた。