第1章 今宵、蜜に溺れてく
「━━━は…っ、は、はぁ」
ずるりと彼自身がわたしのなかから抜け落ちると。
そのままわたしの身体はくたり、と、床へとへたりこむ。
「……っと、ぶね」
のを、一歩手前で。
彼の腕がわたしのお腹を抱え込んだ。
「そんなに良かった?」
抱えられるように横向きに座らされた、あぐらをかいた彼の膝の上。
わたしに見せつけるように、彼はわたしの唾液でびしょ濡れの自分の指先を、ペロリと、唾液ごと舐めとっていく。
「━━━っ」
「あはは、真っ赤、かーわい、理緒」
ああ、駄目だ。
絶対心臓、持たない。
━━━━━━━---………。
「あ、理緒、匠くん」
ギクリ。
ガラリと、図書室の扉をふたりそろって開ければ。
キョトン、とする友人、たまちゃんこと、玉城 雅の、姿。
「探したよ、理緒。匠くんと図書室?」
「あー……うん、ぇっと」
「理緒ちゃんに和訳手伝ってもらってたんだ。今日中に提出しなきゃならなくてさ」
「………」
疑問顔のたまちゃんに適当な言い訳を探していると、人懐っこい笑顔を向けて匠が、助け船を出してくれた。
「匠くんもそろそろ自分でやらないと!理緒にばっか頼ってちゃ駄目だよ?理緒、卒研で忙しいんだから!」
「はーい」
「あ、理緒」
くるりと、たまちゃんがわたしへと向き直ると。
「しー」って。
匠は挑発的にわたしを、人差し指を口許へと導きながら、射抜いた。
「………っ」
「柳先生がね、探してたよー」
「う、うん」
「データ纏めるの手伝えとかなんとか」
「ありがとう、行ってくるよ」
「理緒ちゃん」
行こうとするわたしをわざとらしく呼び止めて。
彼はちゅ、って。
頬っぺにキスをした。
「〰️〰️〰️ッッ!」
「夜はいっぱい啼かせてあげるからね?」
耳元で悪魔の囁きを、忘れずに。
「ありがとー、理緒ちゃん」
バイバイ、なんて無邪気に手を振る匠の姿を見送って。
隣でたまちゃんが、ため息と一緒にひとりごちた。
「溺愛されてますねー、相変わらず」
「いやぁ、はは」
彼の言葉はいつも、内に秘めた欲望を引きずり出す。
顔に集まる熱を悟られないように。
乾いた笑いで誤魔化した。