第2章 今宵、君に酔う
ざわざわ騒がしかった館内が、静まりかえって。
理緒の苦しそうな表情を視界がとらえた頃、唇を離した。
「お、お熱いキスをありがとうございましたー!!」
ニコニコ顔で手を振る俺の横で、今にもパンクしそうな理緒が真っ赤な顔して立っていた。
「も、もう匠っ!!信じらんないっ」
「ごめん理緒ちゃん、だってその方が盛り上がるって先輩に言われて」
「え」
「………ごめん、理緒ちゃん。そんなに嫌がるなんて、思わなくて」
「………」
しゅんと、思い切り項垂れながらも。
理緒の表情を盗み見る。
「……べ、別に嫌とかじゃ、なくて……っ、〰️〰️も、わかった。わかったから、そんなに落ち込まないで」
「許してくれるの?」
「許すとか、別に………」
ごめん、理緒。
ほんとはね。
ほんとはこれは、みんなへの、『牽制』。
理緒は俺の、って。
これで誰も理緒に告白が出来なくなった。
きっと噂は大きく膨れ上がるから。
誰も。
俺と理緒の邪魔をするやつはいなくなる。
「匠、匠寝ちゃったの?」
「……」
「疲れたのかな、匠。おかあさん、匠寝ちゃった」
「受験勉強?今一番大変かもしれないね。理緒、そのまま寝かせてあげたら?」
「うん、毛布もってくる」
俺の頭を持ち上げて膝枕をはずそうとする理緒に、わざとらしく寝返りを打ってみたりして。
寝ぼけたふりして右手は理緒の膝の上。
「た、匠……っ!?」
「………」
「寝てる、の?」
そのまま、寝たふりを通して理緒の柔らかい太腿へと手を伸ばす。
「っ」
ピクン、て、小さく反応する理緒に、理緒の太腿へと顔を沈めながら。
小さくほくそ笑んだ。
「理緒ちゃん」
トントン、て、小さく理緒の部屋を叩けば。
「どーしたの?匠」
「眠れない」
「ああ、そっか。明日合格者発表だよね。……いいよ、一緒に寝てあげる」
「いいの?」
「おかあさんには、内緒ね?」
「うん」