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今宵、蜜に溺れてく

第2章 今宵、君に酔う



「匠ー、朝だよ起きて」


朝6時。
理緒は1分の狂いもなく俺を起こしに来る。


「………あと、5分だけ理緒ちゃん」
「駄目だってば」
「やーだー、眠い」
「もー、匠!!」


布団にくるまった俺を起こすため、ベッドへと近付く理緒の気配。
もう少し。
もう少しだけ、理緒が近付いてから。

「匠!ってば!!」

跨がるようにして布団を引き剥がす理緒に、偶然を装って触れるだけの、キスをする。


「っ」


予想どーり、真っ赤な顔して跳ねるように距離を取る理緒に。
敢えて気付かないふりして、首を傾げた。

「理緒ちゃん?」

「……お、起きた?ご飯、出来てるよ?」
「理緒ちゃん顔、赤いよ?熱?」

わざとらしく額をあわせてみると、理緒は勢いよくさらに距離を取る。

「だ、大丈夫だから!!」


動揺してるの全然隠せてないところがかわいいな、なんて思いながら。
理緒が出ていったドアを見て、目を細めた。



それからも。



理緒が入ってるのわかった上で、脱衣場を開けてみたり。
逆に、理緒が部屋に入ってくるタイミングでわざとらしく着替えてみたり。
みんなと囲むランチタイムの中、わざと理緒のお弁当を理緒のお箸から奪ってみたり。
理緒の膝枕で寝てみたり。
みんながいる前で甘えるのは効果覿面で。
まわりが勝手に俺たちをひやかしはじめた。




「りーお、旦那のお迎えだよ」
「たまちゃんっ!!旦那じゃないってば!」


玉城先輩とは、この頃からの付き合いで。
この人のひやかしのおかげでどんどん理緒が変わっていくのが良くわかった。
俺を、ひとりの男として、意識し始めたのもきっとこの頃からだと思う。






「理緒ちゃん、俺たちベストカップルに選ばれるかな?」



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