第1章 今宵、蜜に溺れてく
もうほんと、恥ずかしすぎる。
何ひとりでわたし、盛って………っ
「━━━━ぇ、わ……っ!?」
顔に集まった熱を冷まそうと両手で顔を覆えば。
ぐん、って。
急に右手が引かれて。
背中が壁にくっついた。
「た、たく……っ、ん……っ!?」
事態が飲み込めなくて顔をあげた瞬間に。
「━━━━━んんぅ!?」
噛み付くように唇が塞がれて。
ぬるりと、当たり前のように暖かい舌が入り込んだ。
ま、待ってここ、まだ、学校……っ。
階段下の薄暗いフリースペース。
夕方ともなればさすがに人通りは少ない、けど。
誰かが階段使ったら、見られちゃう。
まだ遠くで、人の声だってするのに。
「〰️〰️〰️っっ!!」
止めさせようと両手で匠をドンドンて、叩くけど。
その両手も簡単に壁へと縫い止められて。
さらに舌を奥まで押し込んでくる。
舌を絡める音が、響く。
クラクラ、してくる。
匠の、匂い。
息遣い。
どれもが心地よくて。
クラクラしてくる。
ふらつく足元を、足の間に入り込んだ匠の右足が、支える。
話し声も、近付いてくる足音も。
どーでもよく、なってくる………。
「………ん、っ」
「………理緒が、誘ったんでしょ」
漸く唇が離されて。
短く肩で呼吸するわたしと、少しだけ屈んで視線を合わせながら。
匠が、困ったように、言った。
「あんまりかわいいと、困るから」
「………っ」
「ほんと、今すぐ襲いたいの我慢してんのに」
「…………」
どーしよう。
好き。
大好き、かも。
顔を反らしたのは、赤く染まるその顔、隠すため?
今のキスは。
照れ、かく、し………?
「匠」
どーしよう。
「好き」
踵を上げて。
匠の唇へと触れた。
「だから理緒っ」
「うん」
「理緒?」
「待ってる、ね?」
愛しくて。
愛しくて。
止められない。
「今日の夜、襲いに来て?」
「………っ」
待ってるから。
匠。